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12年間続く、時代に流されないネット経営術とは 【おかずのうつわ屋 本橋さま】

12年間続く、時代に流されないネット経営術とは 【おかずのうつわ屋 本橋さま】

この10年で大きく変化したネット業界。事業の参入障壁は低くなったものの、売るための障壁は高くなったと言われる。ライバル店が増え、ものが売れにくくなったということだ。入れ替わりの激しいネット業界で、女性ひとりで起業し、12年続いているネットショップがある。〈おかずのうつわ屋・本橋〉は創業以来、食器だけを取り扱うネットショップだ。東京・世田谷に実店舗も構えている。和食器店の女将であり代表でもある本橋真紀子氏に話を聞いた。

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偉大なるマンネリ
12年間貫く自店の「ポジショニング」と「コンセプト」
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おかずのうつわ屋・本橋
おかずのうつわ屋・本橋

本橋氏が12年前から変えていないことのひとつが「2.5番手というポジショニング」である。本橋氏は〈おかずのうつわ屋・本橋〉の創業前、自店の立ち位置を考えるために食器を扱うショップを5つに分類した。

1番手は、デパートに代表される高級店。広いスペースに、有名な作家、歴史ある窯元の器が並ぶ。2番手は、特定の作家の食器をセレクトして扱う専門店。酒屋が特定の蔵元と付き合うように、お気に入りの窯元から仕入れを行う中小規模のお店である。3番手は雑貨店。食器だけではなく、オシャレな雑貨も一緒に扱っている。4番手は量販店。食器は、生活用品のひとつとして陳列されることになる。最後5番手が100円ショップのようなお店。低価格でそこそこの質が保たれている。

本橋氏は、この5つのポジションのなかから「2」と「3」の間の「2.5番手」という位置に自店をポジショニングした。専門店と雑貨店の間である。「"ここが空いている"と実感していたんです。作家名だけで選択するほど器に詳しくない。でも自分なりのセンスで器をセレクトできる人は多いものです。そんな人たちが気軽に入れて、しかも作家・職人の手で作られた器を並べているお店が2.5番手。実店舗でもこの手のお店は少ないんです」

12年間変えなかったことのふたつめは「コンセプト」だ。「普段使いできる形と価格」というコンセプトの通り、家庭で、毎日食べる料理を盛り付ける器を扱う。どんなに素敵な器があっても、価格が"普段使いできる"に見合わなければ、仕入れを断念する。ターゲットはセンスのいい主婦達。「素敵な奥さんね」と言われることをイメージできる器が好評だ。不況になりはじめたころから、自分の時間を大切にしたい、自宅で好きな物に囲まれて生活したいという意識が高まり〈おかずのうつわ屋・本橋〉の顧客層に、若い女性達も加わった。

「たくさんのショップが生まれては消えていく厳しいネット業界で、うちのお店が12年間続けてこられたのは、ポジショニングとコンセプトを変えずにやってきたからだと思います。時代の流れに沿って変えていくことも必要かもしれませんが、変えずに貫くことで、大成功はしにくいかもしれませんが、緩やかな成長は期待できます。変えずにやってきたことを、私は"偉大なるマンネリ"なんて呼んでいます」と本橋氏は話した。

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きれいな写真と、買いたくなる写真は違う
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「ポジショニング」と「コンセプト」が決まると、商品ページも作りやすい。本橋氏は写真と文章にこだわりを示す。「きれいな写真と、買いたくなる写真は違います。食べたくなる食品と、贈りたくなる食品も違います。眺めていたい食器と、自分の家で使いたい食器も違うのです」

実際に〈おかずのうつわ屋・本橋〉の商品写真は、普段使いを想像させる写真ばかり。家庭で出てくる煮物や魚を盛り付けた状態で、シャッターを押す。自宅のソファやテーブルが写り込んでいるいることもしばしば。専門店やデパートの器なら、より美しく、雰囲気のある写真が必要だが、〈おかずのうつわ屋・本橋〉では、商品撮影用のライトやバックペーパなーなど特別な道具は必要ない。本橋氏は「写真の役割はインパクト。引きつければOKなんです。その後は、文章で丁寧に説得すればいいんです」と話す。

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顧客を説得する文章術
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本橋氏が書く商品説明文は、「コンセプト」通り、普段使いを想定した目線での文章が多い。例えば「黒5寸・8寸皿」という商品名の黒いお皿の説明には「黒のお皿は食卓が暗くならない?といわれることがありますが、お皿だけ見ているとそうですが料理を盛ると本当によく映えます。(中略)やはり黒はインパクトがある分、十分存在感があります」と記載。料理を作る女性たちが「すぐに食卓に並べたい」と感じるような工夫をしている。商品説明文はさらに続く。「つるっとした触感ですが艶はなく、ところどころ小石がはぜたようなぶつぶつとしたところもあり、縁もいかにも手作り感のある凹凸があります」写真で伝えきれない質感を書きこむことによって、説得力を高めている。

商品に惚れ込み過ぎると、作家の説明、窯元の説明、器そのもののスペックの解説文になりがちだ。専門家になりすぎたり、高級感を出しすぎることがないように、本橋氏は常にターゲットを見据え、コンセプトに合致することを意識している。

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マーケティングのノウハウで裏付け
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本橋氏は〈おかずのうつわ屋・本橋〉を始める前に、大手食品メーカーで10年以上勤務した経験がある。食品・食器・雑貨の通販を行う企業に出向したことをきっかけに、マーケティングの基礎を学んだ。

通販カタログの制作では、マーチャンダイザーとして活躍。一緒に制作に関わったデザイナー、カメラマン、コピーライターなどから様々なノウハウを吸収したのもこの時期だった。〈おかずのうつわ屋・本橋〉が、オンラインショップとして来年13目を迎え、世田谷に実店舗を構えるまでに成長しているのは、マーケティングのノウハウをもった店主、本橋氏の存在が大きいようだ。

本橋氏は「夫の転勤、出産などを経験しながら、一生続けられる仕事について考えました。マニラに3年間住んでいたこともありますが、日本のスタッフと連携し、〈おかずのうつわ屋・本橋〉をなんとか続けられました。売上げは一時的に落ちましたが、日本に戻ってからは、持ち直しています」と自信をのぞかせた。

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有名ホテルから注文が舞い込む
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本橋氏はこれまでの12年間を「参入障壁は低くなり、売るための障壁が高くなった」と振り返る。「先輩たちが時間とお金をつぎ込んで導き出したノウハウを、今は簡単に手に入れることができます。システムもパッケージ化されているので、店舗運営が効率的に行えます。顧客の警戒感も減り、誰もがネットで買うようになったことも嬉しい変化です。最近は有名なホテルから注文が舞い込むこともあり、大手企業の担当者もネットで探している現状を実感します」

一方でこんな指摘も。「お金のかけ方が変わりましたね。私がはじめたころは、インターネットは魔法のツールで、手元資金がなくてもはじめることができました。ライバルがいないので、誰でもそこそこ売れましたが今は違います。検索エンジンひとつを考えても、広告費をかけないとダメ、さらにかけ続けないと売上げが下がってしまう。食器業界でいえば、問屋さんが参入してきて、価格競争に拍車をかけています」と資金力のある企業、ない企業という業界の2極化を指摘した。

本橋氏は「器は個人の趣味の世界。3,000円の器を買う人は、決して100円の器では満足できない。逆に100円の器を買う人は、どんなに余裕があっても3,000円の器に価値を感じないんです。言い換えれば、一度つかんだお客様を、いかにリピート客に育てていけるかが大事。うちは約3割がリピーターなんです。同じ器でも、ここでは売れるけど、他ではまったく売れない。そういう不思議な商材が器です。最初に決めたポジショニングとコンセプトを貫くだけです」と締めくくった。


【参考URL】

おかずのうつわ屋・本橋
http://www.utsuwaya.com/index.html

フクダのここがポイント
▼「ポジショニングとコンセプト」を貫こう
▼写真で引きつけ、文章で納得させよう

※本連載は、日本流通産業新聞社発行 週刊「日流eコマース」にて連載中の
「人気ECサイトのコンテンツ&文章力」(2011年3月) に掲載されたものです。
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