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「木のホワイトボード」の価格が10分の1になった理由

「木のホワイトボード」の価格が10分の1になった理由

2008年11月27日
 こんにちは。グリーゼのこみやまたみこです。


 私が講師をつとめさせていただいている連続講座は、大きく分けると

  「設計編」  (戦略策定を目的としたコース)
  「制作編」  (ウェブサイトの設計・制作を目的としたコース)
  「上級編」  (アクセス解析に基づく売上アップを目的としたコース)

 の3つに分かれているのですが、

 どのコースでも共通してやっていることのひとつに
 「ペルソナデザインの策定」があります。

 「ペルソナデザイン」は、本格的に策定しようと思うと、
 それだけで4~6回のコースが作れるくらい深いものですが、

 私の講座の目的は「ペルソナデザイン」を策定することではないので、
 全カリキュラムの中の一部として実施しています。

 では、何のために「ペルソナデザイン」を策定しているかというと、
 「ペルソナ」の人物像・心理・嗜好を具体的にイメージすることにより、

  ◎どういうウェブサイトデザインが好まれるのか

  ◎どういうナビゲーションが使い勝手がいいのか

  ◎どのようなプロモーションをすれば、目に触れる確率が高いのか

  ◎どのようなベネフィットを提示すれば、関心を持っていただけるのか

  ◎どのような情報を掲載すれば、「不安感」を乗り越えて、
   「カートに入れる」ボタンをクリックしていただけるのか

 ということを考えるためです。


 ところが、「ペルソナデザイン」にかけられる時間が短いせいもあるのか、
 ときどき「あれれ?」というような「ウェブサイトデザイン」が
 あがってくるときがあって、
 そんなときは、いつも「ペルソナとユーザーは違うんだよ」という話を
 しています。


 「ペルソナ」と「ユーザー」、あなたは明確に区別できていますか?

 

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  「木のホワイトボード」の価格が10分の1になった理由 
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 まず初めに、「あれれ?」の具体的な事例をご紹介したいと思います。

 沖縄の連続講座を受講してくださっているMさんは、
 「木のホワイトボード」を制作・販売されています。

 実物はまだ見たことがないのですが、
 ポスターを拝見させていただいたことがあります。

 沖縄独特の濃い緑の葉が幾重にも重なり合った森の中に置かれた
 「木のホワイトボード」は、

 オフィス用品でありながら、まるで森の一部であるようなたたずまいで、
 木々と一緒に呼吸をしているように見えました。

 「なぁ~んて素敵なんだろう」
 「いつか広いオフィスが持てたら、このホワイトボードを置きたいなぁ」
 
 と思ったことをよく覚えています。

 価格は、14万7,000円(税込)なのですが、
 ゲスト講師に来てくださったオンラインショップ店長のYさんは、
 「自分だったら、30万円で売る」とおっしゃっていました。
 私も、そのくらいの価値がある商品だと思いました。


 ところが・・・


 Mさんが「ペルソナを変えました」と言って持ってこられた
 「ペルソナに基づいたトップページデザイン」は、
 まさに「あれれ?」というものでした。

 ある方は、

 「ポスターを見たときは、30万でもいいと思ったけど、
  このトップページを見たら8万くらいにしか見えなくなった」

 という意見を出されていましたし、

 私には、せいぜい3万円くらいにしか見えなくなってしまいました。

 商品はまったく同じなのに、
 それが「30万」になったり「3万」になったりするのは、
 一体なぜなのでしょう?



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  ただの「道具」になってしまった「木のホワイトボード」 
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 Mさんに「どんなふうにペルソナを変えたんですか?」とお聞きしたところ、

 以前は「東京の広告代理店で働く男性のコピーライター」を
 想定していたけれど、どうもイメージがつかみきれず、

 実際に購入してくださった方にインタビューしてみたところ、
 その方が沖縄に住むアロマテラピストさんで、
 アロマテラピーに関するセミナーなども開いていらっしゃるということで、
 オフィスに置くために「木のホワイトボード」を
 ご購入くださったのだそうです。

 そこで、Mさんは「ペルソナ」を

 「アロマテラピーやコーチングなどのセミナーを生業にしている
  個人事業主の女性」

 に変更。

 トップページの写真は、
 まさにその「アロマテラピスト」さんのオフィスで撮影されていました。

 沖縄の生命力にあふれた森の中ではなく、

 ごく普通の、個人で運営していらっしゃるセミナー教室の
 ごく普通のテーブルや椅子や棚などと一緒に置かれた
 「木のホワイトボード」は、

 もう呼吸をしてはいませんでした。

 森の中に置かれた「木のホワイトボード」は、
 「ホワイトボード」でありながら、
 何かもっと別なもの、何かもっと素敵なもののように見えましたが、

 写真の中の「木のホワイトボード」は、ただの
 「字を書くための道具」になっていました。

 「道具」であれば、いちばん重要なのは「機能性」ですよね。

 そして、「道具」として購入するのであれば、
 当然「普通のホワイトボード」と比較しますよね。

 アスクルで販売しているキャスターつきのホワイトボードは、
 2万3,900円です。

 デザイン性がちょっとくらい高いとはいっても、
 キャスターもついていない「木のホワイトボード」の
 「道具」としての価値は、せいぜい3万円くらいではないかと思います。



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  ジローラモ氏は、ハンサムスーツを着るのか 
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 私は、Mさんになぜ「30万円」が「3万円」になってしまったのかという
 理由を考えていただくために、

 日経流通新聞 2003年2月27日号に掲載された
 日産自動車CEO カルロス・ゴーン氏の言葉を紹介しました。

 >>> ここから

 「私は車のデザインをする際に、必ずターゲットを決めます。

  その際には年齢、所得、家族構成、その人の嗜好等を考えていきます。
  そうすることによって、企業としての行動に一貫性を持たせることが
  できるのです。

  そして、大事なポイントですが、ターゲットを絞りこんだからといって
  その人々だけしか対象としないということではありません。

  例えば、若者向けに開発した車を、実際には
  想定したより高い年齢層が購入していることがよくあります。
  理由はいたって簡単です。誰もが若い気持ちでいたいからです。

  だからといって、中高年以上を対象に(若そうなものを)
  作ったりはしません。

  狙ったターゲットよりも高齢の人が6割以上を占めると分っていても、
  『これは若者向けです』といって一貫性を持たせるのです。
  そこに成功のカギが隠されているのです。」

 >>> ここまで


 また、補足として、下記のような例を挙げました。
 (一部ちょっと品が悪いところもありますが、
  Mさんに送ったメールをそのまま転載します。)


 >>> ここから


 たとえば、雑誌「LEON」のターゲット(ペルソナ)は
 「ちょい悪おやじ」で、
 イメージモデルであるジローラモ氏がその象徴なわけですよね。


 でも、実際に読んでいるのは
 「ちょい悪おやじ」に憧れている「普通のおやじ」が
 圧倒的に多いわけですよね。

 だからと言って、

 「実際に買ってくれてるのは普通のおやじだから、
  その人たちのニーズに合わせよう」

 と思って

 「新橋の安く飲める赤ちょうちん特集」

 をやったり、

 「おやじは、ほしのあきが好きだから」といって
 (いや、ほんとにそうかどうかは知りませんけど)

 「ほしのあき巻頭グラビア」

 をやったり、

 ジローラモ氏に「紳士服の青山」で買った
 ハンサムスーツを着せたりしたら、
 誰も「LEON」を買わなくなりますよね?

 上記の例でいうところの、
 「ジローラモ氏的ちょい悪おやじ」が「ターゲット(ペルソナ)」で、
 「ターゲット(ペルソナ)に憧れる普通の人」が「ユーザー」です。

 ですから「買った人に話を聞く」のは大事なんですけど
 「買った人」が「ターゲット(ペルソナ)」なのか「ユーザー」なのかは
 しっかり見極める必要があります。

 Mさんは、「ユーザー」を「ターゲット(ペルソナ)」だと思ってしまって
 「ユーザー」に合わせてトップページをデザインをしちゃったために、
 ブランドコンセプトが崩れてしまったということだと思います。

 >>> ここまで

 

 ───────────────────────
  「木のホワイトボード」を30万円で売る方法 
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 「ペルソナ」をデザインするために、最も重要なことは、

    「自分が売っているモノは、本当は"何"なのか」

 を見極めることだと思います。


 「木のホワイトボード」を「道具」として売るのか、

 何かもっと別なもの、何かもっと素敵なもの

 ・・・たとえば、

    「デザインに対する感度の高さ」
    「環境問題に対する意識の高さ」
    「自然との共生というライフスタイル」

    などなどを持っている、イケてるオレ(ワタシ)の象徴

 として売るのか

 によって、「ペルソナ」はまったく違ってきます。

 そして、「道具」には値段がつけられるけれど、
 「イケてるオレ(ワタシ)の象徴」には、値段はつけられません。

 それがいくらであっても、
 その商品を買うことで、「イケてるオレ(ワタシ)」が
 証明できるのであれば、
 アスクルのホワイトボードと価格を比較したりはしないのです。
 

 結論。


 Mさんの「ペルソナ」は、

    「デザインに対する感度の高さ」
    「環境問題に対する意識の高さ」
    「自然との共生というライフスタイル」

    などなどを持っている、イケてるオレ(ワタシ)

 です。

 そうですねえ、私のイメージでは、たとえば
 坂本龍一さんみたいな感じでしょうか。

 坂本龍一さんをペルソナにしてサイトをデザインしたら、
 「木のホワイトボード」は30万で売れる、と思いませんか?
 
 たとえ、実際に購入するのが、
 月々の稼ぎが10万円に届くか届かないかという
 駆け出しの個人事業主であったとしても。


 【参考URL】

 ペルソナとは
 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20080124/291960/

 ペルソナデザイン策定の手順
 http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2007/12/26/2191

 ペルソナデザインの事例
 http://img.jp.fujitsu.com/downloads/about/kids/handbook/
 fujitsu-kids-persona-20071205.pdf
 「ターゲット(ペルソナ)を決めるということは、   それ以外のお客様を排除してしまうことだ」  と思われる方も多いのですが、そんなことはありません。  私たちには、いろいろな「顔」があります。  むかーし、任侠映画を観たあとには、みんな肩をそびやかして  映画館を出てくるなんて笑い話がありましたが、  あれも、ひとつの「顔」ですよね。  40代・50代のバリバリのキャリアウーマンが、  韓流映画にはまってしまうのも、ひとつの「顔」です。  誰の中にも「無口で不器用な高倉健さん的オレ」がいて、  「切ない恋に胸をこがす、チェ・ジウ的ワタシ」がいるのです。  「ペルソナデザイン」とは、それら誰の心の中にも存在する  たくさんの「顔」の中から、たったひとつの「顔」を取り出して、  キャラクターとして、しっかりと立ち上がらせる作業だと思います。  ですから、「ペルソナ」のデザインが的確であればあるほど、  「ペルソナ」とは似ても似つかないように見える  たくさんの人たちの心の中に  「同調」と「共鳴」を呼び起こすのだと思います。

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